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最高裁判所第一小法廷 昭和27年(あ)411号 判決 1954年2月25日

主文

本件上告を棄却する。

理由

札幌高等検察庁検察官検事長堀忠嗣の事件受理申立理由について。

原判決が、「自己の麻薬中毒症状緩和の為使用する目的で麻薬を譲受ける行為とその譲受けた麻薬の所持とは、通常手段結果の関係に在る牽連犯で法律上一罪と解すべきものであるから、所持につき有罪の確定判決があれば、その効力は、当然譲受行為にも及び従って譲受行為は確定判決を経たことになる訳である。」旨判示したことは、所論のとおりである。そして、麻薬取締法三条一項本文は、「麻薬取扱者でなければ麻薬を所持し、輸入し、製造し、製剤し、小分し、施用のため交付し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用し、若しくは麻薬を記載した処方せんを交付してはならない。」と規定しているから、麻薬取扱者でないのに、麻薬を所持し、又は麻薬を譲り受けたときは、原則として各独立した別罪を構成するものといわなければならない。しかし、同条項の但書に、「但し、この法律の規定により麻薬を麻薬施用者から施用のため交付を受け、又は麻薬小売業者若しくは家庭麻薬小売業者から譲り受け、若しくは譲り受けた者が、その麻薬を所持することは、この限りでない。」との規定があるところから見ると、自己の麻薬中毒症状緩和のため使用する目的で麻薬を譲り受ける行為とその譲り受けた麻薬を所持する行為とは、麻薬取締法上包括一罪と解するを相当とする(本件第一審判決の判示第一の(一)の事実参照)。所論引用の当法廷の判例は、旧麻薬取締規則に関するものであるばかりでなく、本件のような案件には適切でない。それ故、原判決は、結局正当に帰し、所論は採用できない。

よって、刑訴四一四条、三九六条に従い、裁判官全員一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

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